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 安全な妄想  長嶋 有

エッセイって久しぶりに読んだ。 しかし、これがなかなか面白くて。 特に気に入ったのが「愛しのジャパネット」。 読んでいると「ジャパネットたかた」を見たくなった。 普通、何かの感想を抱いたり、 考えたりするときに、 この人は普通の人が思うことから …

 ナモナキラクエン  小路 幸也

父親と暮らす、母親が違う4人の子どもたち。 母はみんな出て行ってしまい、 父の友人らしき朝美さんという女性が 普段の生活は世話を焼いてくれる。 そんなある日、いきなり父が死んでしまう。 父は子どもたちにそれぞれの母親の住所と名前を遺言に残してい…

 マザーズ  金原 ひとみ

同じ保育園に子どもを通わせる3人の母親。 ドラック中毒の作家、ユカ。 人気モデルの五月は不倫中。 専業主婦の涼子は精神的に追い詰められて子どもを虐待しそうになっている。 それぞれ、子どものことを深く愛しながらも 自分たちの生活を壊された疎ましい…

 ちょいな人々  荻原 浩

頑張っているんだけれど、それがはたから見ると ちょっと残念な、でも愛すべき「ちょいな人々」のお話。 7つのストーリーの短編集で、それぞれに ちょいな人々が登場する。 いきなり会社がカジュアルデーなどを設けて 慣れない私服と、それに対する女子社員…

 残虐記  桐野 夏生

小学4年生の女の子が、25歳の男に誘拐され、1年間も監禁される。 誰も助けのこない部屋で、犯人からはなぜか「みっちゃん」と呼ばれる。 隣に住むヤタベさんがいつか気がついてくれることを心の支えに、 なんとか生きのびたものの、 助け出されてからもまた…

 天国はまだ遠く  瀬尾 まいこ

生きていくことに疲れきってしまった23歳の主人公が 自殺をするために、日本海側の田舎の村に辿り着く。 さっそく自殺をするのだけれど、あっさり未遂。 そのまま民宿で暮らすことにする。 自然とともに生きて、 身体の欲するままに食べて、歩いて、眠る。 …

 元気でいてよ、R2-D2。  北村 薫

まえがきに「怖い話」を含めた影のある短編集をつくることになったと 書かれてあったけれど、特にわかりやすい恐怖は感じなかった。 それよりも、普通に暮らしている人の中にある 嫉妬や、ねたみや、怒りや、過去のつらい記憶が ふっと見えてしまう瞬間の怖…

 天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語  中村 弦

時代は明治、大正。すごい才能をもった建築家の笠井泉二が 施主の依頼に応えて、 誰にも考え付かないような不思議な家をつくる。 施主の心の奥の想いやこれまでの人生までも 全部ひっくるめて、その人だけのための家をつくる。 そこは、その人が心から安心で…

 シンプル・プラン  スコット・スミス

夏休みに実家に帰ったときに、本棚にあった本。 ずっと前に私が読んで置いていった本だった気がする。 ストーリーはすっかり忘れていたので、持ち帰って再読。 主人公ハンクと兄のジェイコブが、友人のルーと3人で 偶然雪の中に墜落した飛行機を見つける。 …

 夜をぶっとばせ  井上 荒野

この作家の作品は初めて読んだのだけれど。 最初は同窓会での主人公たまきの飄々とした様子に気楽に読んでいたら 彼女の家庭のすさんだ様子がこれまた淡々と書かれていて うひゃ〜…となってしまう。 カメラマンのダンナの最低な所業といい 子どもの学校での…

蜜姫村  乾 ルカ

不思議な形のアリを見つけた昆虫学の専門家が 妻を連れて、そのアリを見つけた村に研究のために滞在する。 しかし、村の人は親切なのに、どうも様子がおかしくて。 どうやら、村の奥に何か不思議なことが隠されているらしい。 確かめに行った夫は行方不明に…

 二流小説家  ディヴィッド・ゴードン

主人公は売れない小説家のハリー。 ヴァンパイアものやポルノ、ミステリなどの小説を書いている。 私生活も彼女の捨てられたりして今一つ。 そんなハリーに、世間を震撼させた連続殺人犯から 手記を書かせてやるという話が来る。 これで二流小説家から一流小…

 モダンタイムス  伊坂幸太郎

先日読んだ「魔王」が、なんとなく終わり方が続編があるような気がして 探してみたらありました。これこれ。「モダンタイムス」 続編と言っても、別に「魔王」を読んでいなくても これ自体で面白く読めたかも。 物語は、「魔王」からさらに数十年後の未来の…

 ハロワ  久保寺 健彦

ハローワークで嘱託の相談員として働くことになった信。 求職者にまっすぐに真面目に向き合うがゆえに 妙なファンがついて時間を取られてしまい、 ますます成績が下がってしまったり。 でも、何に対しても実直な信の人に対する姿勢はきらいじゃない。 という…

 5  佐藤 正午

初めて読んだ作家さん。 妻に対してこれっぽっちも欲望を持てない夫が、 バリ旅行のある出来事をきっかけに、 妻への気持ちを取り戻す。 妻には浮気相手がいるのだが、 それがこの物語の主人公の作家で。 この作家がどうにもまあ、偏屈というか自分勝手とい…

 魔王  伊坂 幸太郎

「考えろ考えろマクガイバー」がモットー(?)の考察好きの会社員、安藤。 自分の考えていることを相手に言わせるという不思議な力を身につける。 その頃、日本は政治に対する諦めの気分が充満していた。 が、そこに犬養というこれまでとちょっと違った政治…

 精霊流し  さだ まさし

今年は祖母の初盆で、精霊流しをすることになることから 読んでみようかな、という気になった。 さだまさしは、同じ故郷の人だけれど、 そんなに好きなわけではなかったから、今まで読む気にならなかったのだ。 正直、小説の出来としては全体の構成とかちょ…

 あなたの呼吸が止まるまで  島本 理生

こちらはろくさんの感想を読んで、興味を持った本。 12歳の女の子ということで、うちの娘と近い年齢だなあと思って。 たしかに、12歳の女の子というと、 まだ子どもなのかもしれないけれど 自分が12歳のことを思い出すと、案外いろいろ考えてるし、 大人のこ…

 ボトムレス  拓未 司

「HOLE」という「死ぬほど旨い料理」を出すというレストランがある。 料理評論家や大食いチャンピオンやロハスなお姉さんなど 食にこだわりのある人々が、そのウワサに惹かれて訪れる。 でも実は、それは「死ぬほど旨い料理」ではなくて 「食べると死ぬかも…

 死んでいる  ジム・クレイス

りつこさんの感想を読んで、タイトルもインパクトがあるし 川上弘美のお勧めということもあり 興味を惹かれて読んでみた本。 動物学者である50代の夫婦が砂丘で殺される。 妻は下半身、夫は全身裸の状態で。 殺され方も残忍で、そして放置された死体は 砂漠…

 六月の輝き  乾 ルカ

家が隣同士で、とても仲がよかった美奈子と美那。 6年生のとき、美那に不思議な力があることがわかり、 それをきっかけに美奈子と美那の仲は壊れてしまう。 美那を許せない美奈子。 美奈子を黙って慕い続ける美那。 美奈子の母は、そんな2人を見守り続け、 …

 花の鎖   湊 かなえ

勤めていた英語塾がつぶれてしまった梨花。 和菓子屋でアルバイトをしながら、週に一度絵画教室で絵を教えている紗月。 結婚したものの、子どもができずに悩んでいる美雪。 3人の女性は同じ田舎町に住んでいる。 商店街にあるきんつばがおいしい和菓子屋や、…

 見えないドアと鶴の空  白石 一文

主人公、繁村昴一は編集者の仕事をやめて妻、絹子に食べさせてもらいながら ときどきライターの仕事をやっている。 絹子には親友の由香里がいて、一人で子どもを産もうとする由香里を 夫婦そろって面倒を見ているのだが、 昴一は由香里と深い関係になってし…

 鱗姫  嶽本 野ばら

主人公は「美」に異常なまでに執着する高校生、楼子(たかこ)。 家もお金持ちで、自分も兄もものすごく美しく、 その語り口や思考回路がそれはそれはあまりにもタカピーすぎて 最初はぎえ〜、と思っていたけれど、 デフォルメされすぎているからか、だんだ…

 下町ロケット  池井戸 潤

下町の中小企業が大企業の理不尽な要求や攻撃に立ち向かう。 その構成は「空飛ぶタイヤ」と似ている。 この物語も、大手の取引先から取引を停止されたり わけのわからない訴訟をおこされたり そのために銀行からも融資を断られたりと 「空飛ぶタイヤ」ばりの…

 往復書簡  湊 かなえ

友人の結婚式で久しぶりに再開した高校時代の友人同士、 退職を迎えた教師と、同じく教師となったその教え子、 そして遠距離恋愛になってしまった恋人たち、 さまざまな状況で文通をすることになった彼ら。 最初は、ほのぼのとした様子で始まる文通が、 次第…

 てふてふ荘へようこそ  乾 ルカ

「てふてふ荘」というボロアパートのお話。 ぼろいけれど、ちゃんと管理人がいて手入れがとても行き届いている。 そして、家賃がとっても安い。 敷金礼金もいらなくて、最初の一か月は家賃も無料。 でも、そんなおいしい話にはやっぱり理由があるわけで。 そ…

 彼女が追ってくる  石持 浅海

初めて読んだ作家。 箱根で行われる経営者が集まる「箱根会」というパーティ。 宿泊するのはコテージ。 そこで殺人事件が起こる。 犯人は参加者の誰からしいということで、 犯人探しが始まる。 といっても、読者には犯人はわかっているのだけれど。 適度に面…

 テティスの逆鱗  唯川 恵

先日読んだこの作者の本がまあまあ面白かったので 続けて読んでみた。 今度は、超高級美容整形に通いつめる女性たちの話。 芸能人やらお金持ちのお嬢さまやキャバ嬢や不倫にのめり込んだ主婦やらが 「ちょっと手を入れれば自分ののぞむ姿が手に入れられる」 …

 一匹羊  山本 幸久

初めて読んだ作家の本。 短編集なのだけれど、どのお話も読後感がほんわかしていて。 普通の人の普通の人生で、誰もが感じたことのあるような もやもや感や、あきらめの気持ちや、寂しさが描かれていて、 でも、人との偶然の関わりをきっかけに そこから一歩…