天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語  中村 弦

時代は明治、大正。すごい才能をもった建築家の笠井泉二が
施主の依頼に応えて、
誰にも考え付かないような不思議な家をつくる。
施主の心の奥の想いやこれまでの人生までも
全部ひっくるめて、その人だけのための家をつくる。
そこは、その人が心から安心できる空間で、
そこでようやく心から癒される施主の姿が
しみじみと心にしみる。読んでいるこちらまで幸せな気持ちになる。


そして、それを淡々とつくりあげる建築家の姿がかっこいい。
でも、そのために泉二はとっても悲しい犠牲を払っていて。
その自分の運命を受け入れながら、
施主のすべてを受け入れて建築に没頭する。
悲しいのだけれど、でも、だからこそ彼の建築が
それほどの力を持っているのだというのも、わかる。


私も家づくりに関しては
原稿を書いたり取材をしたりして、
いろんな話を聞くけれど
建物の大きさは違っても、
家づくりの根底というか、そこに込められる想いは通じるものがあって
とっても面白かった。
やっぱり、無から物をつくりだす人ってすごいなあと
しみじみ思う。


天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語 (新潮文庫)

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