一匹羊  山本 幸久

初めて読んだ作家の本。
短編集なのだけれど、どのお話も読後感がほんわかしていて。
普通の人の普通の人生で、誰もが感じたことのあるような
もやもや感や、あきらめの気持ちや、寂しさが描かれていて、
でも、人との偶然の関わりをきっかけに
そこから一歩踏み出すことができて、
違う角度からモノが見えるようになるというか。


私が一番好きだなあと思ったのは、「どきどき団」。
停年退職した夫はかなりな俺様で見栄っ張りで、
そのせいで一人息子とも疎遠になってしまって、
妻はそんな夫にうんざりしていて。
ああ、わかるわかる。
年とってくると人ってある面ですごく意固地になっちゃって
めんどくさくなるんだよね。
特に男の人がね……(もごもご)。


まあ、もちろん自分もそういうところ出てきたなあとは思うし、
だから、たまに人にも自分にもうんざりすることってある。


でも、その妻がうんざりしまくった挙句に
ふとしたきっかけで夫とバーン!と向き合うことができるわけで、
それがまた爽快で、かっこよくて、泣きそうになった。


全部をあきらめる前に、もう一歩踏み出すことで
自分も人も変われるのかもしれないなあと、
人生もなかなか捨てたもんじゃないと、
そんな風に思わせてくれた本。


一匹羊

一匹羊