夜をぶっとばせ  井上 荒野

この作家の作品は初めて読んだのだけれど。
最初は同窓会での主人公たまきの飄々とした様子に気楽に読んでいたら
彼女の家庭のすさんだ様子がこれまた淡々と書かれていて
うひゃ〜…となってしまう。


カメラマンのダンナの最低な所業といい
子どもの学校でのトラブルといい
たまきの出会い系サイトでのあれこれといい
その後の母子の状況といい、
これは現実に起こったら相当きつい話なんだろうけれど。
なんとなくたまき自身が他人事のように向き合っているような印象を受ける。
いや、これはそういう風に現実と距離を置くことで
自分を守っているということなんだろうか。


でも、学校で子どもがお友だちにけがさせたときの発言とかは
しっかりと目が覚めている感じだったけれど。


表題作の後に「チャカチョンバへの道」という作品が続いていて
これは数年後の日々をたまきの夫の目線から描いていて。
この夫の自分の見えてなさっぷりったら。
被害者意識でかたまっている人って
何も見えてないんだな。
そして、それに負けないくらいたまきとその友だちの瑶子も不思議な感じで。
なんでこうなっちゃうの、たまきさん、瑶子をとめなよと思いつつ
いや、人って思いこんじゃったら周りが何と言ってもダメなんだろうし、
でもなあ……


と、なんだかもやもやとするというか、
でもしょうがないのかなあというか
そんな不思議な読後感だった。


夜をぶっとばせ

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