あなたへ  森沢 明夫

映画を原案にした小説。
原作を映画にするのと逆の作品らしい。


刑務所で作業技師として木工を教えている主人公の倉沢。
口下手で、決められた日常を淡々とこなしていく日々。
年を取ってつれそった妻と静かに暮らしていたが、
妻が病に倒れてしまい、亡くなる。
その妻の遺言を受け取りに、長崎の平戸まで旅することになるのだ。


旅の途中で、なんとなく眼つきの悪い、いかにもわけありな杉野や
イカ飯の営業販売をする田宮、南原という男たちと出会い、
不器用ながら交流を深めていく。
その様子が、危なっかしくて微笑ましくて。
みんな、心の中にいろいろ抱えているんだけれど、
その不器用な交流を通して、
それぞれ何らかの次の一歩を見い出していく。


実際はあまり幸せとは言えない状況で
おそらく困難もあるだろうけれど、
それでも、みんな先に希望が見えていて
いいお話だなあと思った。
読後感がじんわりとよかった。


あなたへ (幻冬舎文庫)

あなたへ (幻冬舎文庫)