砂上のファンファーレ  早見 和真

バブルのころに憧れの一軒家を郊外の住宅地に購入した家族。
その後、仕事がうまくいかなくなり、
ローンの支払いがきつくなり、
夫は今一つ家族を守る気概に欠けて頼りなく、
妻は裕福な友人を羨み、
兄は真面目に頑張っているものの妻とどこか心が通い合ってなくて
弟は家の状況なんて知らずにテキトーに生きてて金の無心ばっかりして。


なんて、そんなときに、母が病に倒れる。
それも余命一週間て。


それまでの家族それぞれの悩みや閉塞感は、すごくわかる気がする。
それは兄の嫁が抱える不満や不安もそう。
しょうがないよね。こんな状況になったらそうなるよね。って。


そして、そんなもやもやを抱えながら
母の病気にそれぞれが向き合うことで、何かが少しずつ変わってくる。
閉塞感が少しずつなくなっていく。
ああ、あきらめちゃったらダメなんだなあ。
ダメダメな状況でも、その中に光を見つけることってできるんだなあ。
なんて。


そして、自分の気持ちに正直になるって、大事なんだなあと思った。
病気で思考や記憶がぐちゃぐちゃになるお母さんの
焦点の合わない目で語るふとした本音が、とてもいとおしいと思えた。


私は、死ぬときに「生きていて幸せだった」って言えるかなあ。


砂上のファンファーレ

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