決壊  平野 啓一郎

以前、私が読んだ「後悔と真実の色」を読んだろくさん
「ちょっと似ている」と紹介してくれた本。
どれどれ、と私も読んでみた。


最初は北九州にある普通のほのぼのとした家族の様子が描かれていて、
とはいっても、お父さんが鬱病の心配があったり、
なんとなく兄弟の確執のようなものが見えたり、
でもそれも、よくある家族の裏の面でもあるような、
まあ、そんな話が淡々と語られていて、
まったく犯罪の匂いがしない。


おまけに、ときどき政治の話や宗教の話など
目がうつろになりそうなことを登場人物たちが延々と語りだしたりする。
こ、これは挫折本になりそうかも……。


と、思いながら読んでいるうちに、
ほんとに唐突に事件が起こる。
そして、今までの家族のあれこれや、退屈でむずかしい会話たちが
ここで全部見事につながる。
そこからはもう、一気読み。圧倒されました。


犯罪というのは、起こったその時、当事者だけじゃなくて、
その周りの人の人生や未来や、そして過去までも塗り替えてしまう。
そのあまりの重さに、読み終わってもどーん……とした思いが残った。
そして、そんな中でも、母親はつよいなと思った。
立ちあがって前に進む力を持っているのは、母親なのかな。
でも、同じ母親でも、子どもが被害にあった母親はまた全然別なのかもしれないけど。


決壊 上巻

決壊 上巻

決壊(下) (新潮文庫)

決壊(下) (新潮文庫)