Nのために  湊 かなえ

高級マンションで夫婦が殺される。
現場に居合わせた4人の証言により、
犯人はすぐに特定される。
証言にも食い違いはない。
事件解決。


・・・のはずなのだけれど、どうやら真実は違うらしい。
それが、その4人それぞれの視点から語られる。
4人の過去と、そして事件から10年後の姿もからめて。
行きつ戻りつ、少しずつ真実に近づいていく。


で、この「N」なのだけれど、
登場人物すべてが「N」なのだ。
すべてのNさんが、別のNさんのために、
ために、ために、が積み重なって
生まれてしまった悲劇、ということなのかなあ。


背景に、虐待やDVという問題が流れていて、
そこがまた読んでいてつらくなってしまうのだけれど。
心が少しずつ壊れていく人も、
とてもつらいだろうし、かわいそうだと思うけれど、
その人の周りの人たちがまた心を傷つけられていくのが、つらい。


Nのために

Nのために