夏光   乾 ルカ

人の死ぬときがわかる少年、
人の気持ちを匂いで感じ取る女性、
不幸を呼ぶ穴のある耳を持つ少女、
身体の一部をテーマにして描かれる物語は、
その時代の裏側の暗い部分と重なって、
時につらくて、時に悲しくて、
そしてグロテスクでもあって、
それでも目が離せない。


何より、そこには消そうとしても消せない、
捨てようとしても捨てられない
人間の優しさと強さが流れている。


本当は優しくしたいのに時代や環境がそうさせなかった。
そういう状況の中でも、
そして時代や状況に流されながらも、
顔を上げてそれを受け入れて行く強さがあって。


特に「夏光」と「夜鷹の朝」は、泣けたなあ。
そして、「は」を読むと、むしょうに「鍋の後の雑炊」が食べたくなった。


夏光

夏光