夏光 乾 ルカ
人の死ぬときがわかる少年、
人の気持ちを匂いで感じ取る女性、
不幸を呼ぶ穴のある耳を持つ少女、
身体の一部をテーマにして描かれる物語は、
その時代の裏側の暗い部分と重なって、
時につらくて、時に悲しくて、
そしてグロテスクでもあって、
それでも目が離せない。
何より、そこには消そうとしても消せない、
捨てようとしても捨てられない
人間の優しさと強さが流れている。
本当は優しくしたいのに時代や環境がそうさせなかった。
そういう状況の中でも、
そして時代や状況に流されながらも、
顔を上げてそれを受け入れて行く強さがあって。
特に「夏光」と「夜鷹の朝」は、泣けたなあ。
そして、「は」を読むと、むしょうに「鍋の後の雑炊」が食べたくなった。
- 作者: 乾ルカ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/09/13
- メディア: 単行本
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