彼女がその名を知らない鳥たち  沼田 まほかる

もしかしたら、この著者の作品にはまっているかもしれません。
また読んでしまった。


今回の主人公十和子は、昔の男の思い出にすがって
働きもせず家事もせず、自分が嫌悪する年上の男、陣治に食べさせてもらっている。
この十和子の陣治に対する扱いというか態度がもう最悪。
それに対する陣治も、たしかにそれは気持ち悪い男なんだけれど
十和子にやられっぱなしで、でも尽くしまくっていて。
ときどき出てくる十和子の姉も、
十和子を捨てた昔の男も、
みんなどこか壊れているというか、
もう、読んでいてざわざわざわざわ。
人間の、そして自分のイヤな部分を掘り起こされるような気持ちになって
正直、だんだん読むのがつらくなる。
でも、やめられない。
ここでやめたら、ざわざわしたまま、
自分を嫌いなまま放置されてしまう気がして読み進めてしまう感じ。


そしてラストがまた、なんとも言えない。
今までの嫌悪感が大きければ大きいほど、ガーンと頭をたたかれて
目が覚めるというか。
そして、果てしなく悲しい。
それは、ラストの衝撃的な真実はもちろんなのだけれど、
自分は何を見てきたんだろうという思いと、
でも、たぶん何度同じ状況になったとしても、
やっぱり自分には最後まで気がつかなかっただろうというのがわかるからで。


この人の作品は、ほんとうに胸がざわついてつらくなるのだけれど
でも、どうにも癖になるというか、マゾなのかオレはと思うような
妙なひきつけられ方をしてしまう。
たぶん、また別の作品も読むと思う。


彼女がその名を知らない鳥たち

彼女がその名を知らない鳥たち