死ねばいいのに  京極 夏彦

これはもう、タイトルに惹かれて読んでみました。
「死ねばいいのに」なんてね、まあ、なかなか言えないですもの。
それをずばりタイトルにするなんて。
いやー、すごいわ。


物語は、アサミという女性が死に、
アサミの単なる「知り合い」というケンヤが
生前のアサミと関わりがあった人たちに
アサミのことを聞いてまわるというお話。
ケンヤはちゃんとした仕事にもついてないし
口のきき方もあまり知らないチャラい男。
でも、ケンヤが話を聞きに行った人々の自分語りと比べると
ケンヤの方がずいぶんまともな気がしてくるのが不思議。


そうなのだ。みんな、自分のことばっかりで
アサミのことを話さない。
話さないのではなく、話せないのだ。
自分のことばかり考えていて、
自分しか見ていなくて。


まあ、だんだんとケンヤが饒舌になっていく様子は
それはそれでうんざりするのだけれど、
それでも、すごく考えさせられる。
私は、周りの人のことをちゃんと見ているんだろうか。
家族について、友だちについて、仕事仲間について、
どれだけ語れるだろうか。


ちゃんと見ることって
できているようで、なかなかできていないものなんだなあ。


死ねばいいのに

死ねばいいのに