風待ちのひと  伊吹 有喜

四十九日のレシピ」がとてもよかったので、
同じ作者の本を読んでみた。


海辺の町にある母の家を訪れた哲司。
仕事がうまくいかなくて、家庭も壊れかけていて、
心に風邪をひきかけている。


その町で出会った喜美子は
一見、あっけらかんとした「オバチャン」なのだけれど
実は哲司と同じ年で、
そして、自分も昔心に風邪をひきかけたことがあって。


哲司も、そんな喜美子や町の人々との関わりの中で、
少しずつ、元気になっていく。
なんとなく、この構図は「四十九日のレシピ」と似ているかな。


人は誰も、心に悲しい傷を抱えていて、
でも、それでも生きていかなくてはいけなくて、
でも、だからこそ人にもやさしくできたりして。


音楽があって、木があって、海があって、
そして丁寧に住まわれた岬の家があって。
じんわりと温かな作品だった。


風待ちのひと

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