下流の宴  林 真理子

高校中退して、その後の人生の目標も何もなく
単にだらだらとプーしたあげくに、家を出てしまった20歳の息子、翔。
なんと、沖縄出身の2つ年上の飲み屋の娘でフリーターの珠緒と同棲して
これから結婚するという。
それを嘆く母親由美子。
玉の輿を狙うことだけを目指している姉はそんな弟を
自分の夢を邪魔するものとしか思っていない。


自分はちゃんと大学にも行って、子どもにもちゃんとしたしつけをして
教育をしてきたつもりなのに、どうしてこんなことになってしまったんだろうと
どうしたらこの子にやる気と向上心をもってもらえるんだろうと
悩む由美子の姿が思いっきり自分に重なる。とほほ……


でも、普通はそうだよなあと思う。
誰だって、子どもには普通に学校に行って、普通に就職して、
できればちょっとお給料のいいところに行ってもらって、
普通に結婚して、親はそれを安心して見ていたいと思うもの。


ただ、由美子の珠緒(=下流)に対する見下し方がそれはそれはすごくて。
いや、これもきっと、人間の心の中には多かれ少なかれあるものだと思う。
それがあるからこそ、みんな頑張ろうと思うのだと思うし。
でも、それに対して、珠緒のお母さんが語る下流なら下流なりの美学が
かっこいい。
なんだろうなあ。西原さんの美学に通じるものがあるというか。


そして、由美子の言葉がきっかけとなり、珠緒はある決意をする。
それに向かって突き進むうちに、自分でも気がつかないうちに
珠緒は変わっていく。
それに対して、翔はいつまでも同じところにいる。


まだ20歳の若さで、
どうしてこんなに疲れてしまっているのだろう。
どうして、何もかも諦めてしまうのだろう。
どうして、先のことから目をそらしてしまうのだろう。


でも、しょうがないんだなあと思う。
周りがどう頑張っても、本人が自分で頑張ろうと思わないと、
どうにもならないんだなあ。
しみじみ……


ずっと存在感のなかった由美子の夫が、
最後に出てきて、ゆがみまくった由美子の言葉に対して
きちんとした見方で語るのが、心地よかった。
私も、由美子みたいにならないようにしなくちゃ。はい。


下流の宴

下流の宴