やさぐれるには、まだ早い!  豊島 ミホ

作家さんのエッセイ。
実は全然知らない作家さんだったのだけれど、
なーんかタイトルに惹かれて読んでみた。
L25に連載されていたらしい。


田舎から出てきて、作家になって成功しているのだけれど
すごく自分と近い感じがするというか、
なんだろう、ちょっと自分に自信が持てていない感じが
親近感が持てるというか。


たとえば仕事について。

どこかに「向いている」仕事があって、それに就けば、
誰でもやりがいと楽しさと感じて働けるというのは、
誰かが作った幻想だ。


普通の人間にあるのは「どちらかと言えば向いている仕事」と
「どちらかと言うとやりづらい仕事」だけ。
すべてがうまく回って行く「天職」なんて多分ない。
少なくとも私は、そう考えないとやっていられないし、
それでいいじゃないか、と思う。


そうだなあと思う。
どんな仕事でも、楽しいこともあれば辛いこともある。
だから、その中で自分が楽しいと感じられる割合が多くて、
辛いことが耐えられる仕事が、向いている仕事なんだろうなと思う。


たとえば、私は飛び込みの営業とか向いてないだろうなと思う。
契約が取れたときの喜びや充実感より、
きっと目の前でバタンとドアを閉められたり、
冷たくあしらわれる辛さの方が耐えられないだろうから。

……もって生まれてきた力をあまり発揮することのないまま、
捨てられていくモノも多い。
そういう事実を鑑みると、ひょっとすると人間もそんなものではないんだろうか?
という考えが浮かんでくる。
それぞれの特性により、愛される可能性を持ちながらも、
運が悪ければその機会に恵まれぬままこの世界から消えていく、
そういう儚いものなんじゃないだろうか。


このくだりも、じんわりと心に響いた。
一人ひとり、みんなかけがえのない個性と魅力を持っているのに、
たまたま居た場所が自分を受け入れてくれなかったり、
自分の良さをなくしてしまうような場所だったりして、
どれだけの人が自分の価値を信じられなくなっているんだろうと思う。
会社とか、友だちとか、夫婦とか、家族とか、いろんな場所で。
そして、それの一番悲しい形がイジメなんだろうな。


なんて、割と軽く読めるエッセイなのだけれど、
ふっと自分の心の奥を見つめるきっかけになる言葉があって
なかなかよかった。


やさぐれるには、まだ早い! (ダ・ヴィンチブックス)

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