チッチと子  石田 衣良

4年前に妻を交通事故で亡くした作家、青田耕平と
小学4年生の一人息子カケル。
作家はカケルにチッチと呼ばれている。


耕平はデビュー作以来、作家としてはなかなかヒット作に恵まれない。
そんな作家のお財布事情や日常生活、
耕平が文学賞にノミネートされたときの業界の裏側などが
描かれているのが、ほ〜、そうなのかーと面白い。


カケルは素直に育っているし、
耕平もブレイクするわけではないけれど
仕事はきちんとあって、ファンもいて、
それなりに父子の生活は穏やかに楽しく過ぎていく。


でも、妻の、母の不在という事実はやっぱりとても悲しくて。
そして、その死についても
「本当に事故だったのだろうか」という疑問が出てきたりして。


妻の死について、そして自分より若い作家の才能に嫉妬して
悶々と苦悩する耕平の姿は、
私も割とうじうじ悩む方なので、とっても共感できる。


でも。
そんなパッとしない売れない作家の耕平が
なぜか若くて美人でステキな女性たちにもてまくるのですね。
そこがどうもね。
せっかく「4TEEN」で石田衣良っていいなあと思ったのに、
また「夜の桃」のときみたいな印象に微妙に逆もどり。


何の取り柄もないような地味な中年男が
「自分ではそんなつもりはこれっぽっちもないのに、
 どうしてこんなにもてるんだろう、困ったなあ」という。
はいはい。そりゃよかったですね。で?なに?自慢?みたいな。
作家であることや年齢的なことや文学賞を受賞したところとかが
本人とかぶっちゃうからかな。
どうも、ね、なんとも、ね・・・ うーん・・・


でも、そのモテ自慢以外では、好きな作品だったかな。
特に、ラストはとてもよかった。


チッチと子

チッチと子