八日目の蝉 角田 光代
不倫相手の子どもを一目見たいと、
誰もいない家に忍び込む希和子。
赤ん坊を抱いた瞬間、どうしようもなくなり
そのまま連れて逃げてしまう。
第一章はその希和子の視点から、
第二章は連れ去られた子ども(恵理菜)が大人になってからの視点で
物語が描かれる。
吉田修一の「悪人」を読んだときに感じたように、
いったい、悪いのは誰なんだと思ってしまった。
たしかに、人の赤ん坊を盗んでしまう希和子は悪い。
赤ん坊の両親も、その赤ん坊の人生をも狂わせてしまうのだから。
でも、希和子との人生が赤ん坊にとって幸せであるのならば?
実の両親だからといって、ろくでもない親と暮らすことが、
本当に幸せなのか?
でも、最初から連れ去りなんてなければ、
あのろくでもない両親とだって、もう少しマシな家庭生活ができたのかもしれないし。
読みながら、いろいろと考えを巡らす私と同じように、
恵理菜も迷い、考える。
でも、最後に彼女が、希和子と暮らした土地のにおいと風景を感じ
自分の気持ちに気が付くとき。
とっても嬉しかった。
憎むことでしか、自分を支えられないときもある。
でも、それが自分をさらに苦しめていたと気が付くことができたとき、
世界は変わるんだなあ。
そのためには、とことん憎んで苦しむ時期も必要なのだろうけれど。
でも、その先には、
八日目の蝉だけが見ることのできる世界があるのだ。
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/03
- メディア: 単行本
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