三面記事小説  角田 光代

新聞の三面記事の小さな事件。
事件の概要が簡単に書かれているだけの、
その後の経過も何もない、忘れられてしまうような事件。
でも、だからこそ、疑問も持ってしまう。


38歳の女が16歳の男の子を自宅に連れこんで・・・って、
その16歳の親は?38歳の女は家族はいなかったの?
どうして16歳の男の子といえば、もう38歳の女性より体力的には
勝っているはず。どうしてなんだろう?


殺人を依頼して、それが実行されないからって
警察に相談に行くなんて、ありえない。
どうしてそんなことになっちゃったんだろう?


そんな、事件の背景を創作したのがこの作品。
角田さんって、前も小学校お受験殺人事件をモチーフにした
作品を書いていて、それもすごく引き込まれたけれど、
今回も同じように面白かった。
もちろん、フィクションなので、それが事件の本当の真実ではないのだけれど
登場人物が犯罪に手を染めてしまうまでの心のゆがみや
心理状態の変化が、まるでその場で見ているかのようで。
どんな小さな事件にも、その背後には長い時間をかけてつくり上げられた
人間関係や人格の形成があって、
そんな伏線がからみあって、
そしてそれがふっとずれてしまったり、ぷつんと切れたりしたときに
事件が起きてしまうんだなあと。


でも、小さな三面記事だけで、ここまで事件の背景を想像して、
そして作品にできるなんて、
すごいなあと思う。
やっぱり、作家ってすごいなあ。
面白かった。


三面記事小説

三面記事小説