友がみな我よりえらく見える日は  上原 隆

ええ。ありますね。そんな日が。
1ヵ月のうちに3日間ほどでしょうか。
ホルモンに翻弄される時期は特に。


というわけで、読み始めたこの本。
事故で両目と片足を失ったという人の衝撃的な話からはじまり、
男性と恋愛をしたことがなく、会社でも浮いている46歳の女性の話、
ホームレス生活をする作家、登校拒否になった高校生など、
不幸話が次から次に続く。


えっと、これって、
「友がみな我よりえらく見える日は、
 こうして自分より不幸な人もいるんだから、元気だそうぜ」
という本なのでしょうか。
と、だんだん複雑な思いになってくる。
でも、「あとがき」を読んで、そうじゃなかったんだなと。

人が傷つき、自尊心を回復しようともがいているとき、
私の心は強く共鳴する。
「(不安から)逃げるのが上手だからさ」と田島さんが頭をかく時。
「私よりひどい生活をしている人はいっぱいいる。私はまだずっとまし」
といって長沼さんが電話をピカピカになるまで拭く時。
自転車を押しながら東さんが「自分の道はひとりで歩くしかない」とつぶやいた時。
私の心はギュッとつかまれたような感じになった。
本書に登場しなかった人を含めて、様々な人に会い、話を聞き、行動をともにした。
そして今、こう思っている。
人はみんな自分をはげまして生きている。


たしかに、この本に出てくる人たちは、
孤独で、報われなくて、恵まれなくて、寂しくて、
一般的に不幸だと思われる境遇にいる人たちかもしれない。
でも、そこで世の中をうらむでもなく、人をうらむでもなく、
現実を受け入れて、淡々と生きている。
それは、その人だけの心のよりどころを持っているからなのだ。
それが、たとえ歪んだ形であったり、他の人から理解できないものであっても。
みんな、自分をはげまして生きている。


友がみな我よりえらく見える日は

友がみな我よりえらく見える日は