風花  川上 弘美

子どもがいない30代の夫婦。
夫の心はすでに妻から離れ、浮気をしている。
それでも、妻は夫から離れられない。
じっとりと夫のそばに居続ける。


・・・この本の前に読んだ『スイートリトルライズ』と
同じような設定だな。
しかし、この本の妻「のゆり」の方が
『スイート〜』の「瑠璃子」よりはるかに気が弱く、
ダメダメちゃんだ。


一人では生きていけない、誰かが守ってあげなければならないような女。
自分の意見も言えず、自分の考えで動けず、
だからこそ、傷つけられても悲しくても、何も言わない。
夫にも浮気相手の女にも何も言えず、決断も下せない。


それって、ある意味、一番強いのかもしれない。
グレーの状態に、いつ終わるかわからない辛い状況に
自分を置きつづける強さ。
そして、それが実は夫や相手の女性に対するじわじわとした
強烈な攻撃にもなっている。
おそるべし、のゆり・・・・・・


でも、のゆりも、少しずつ少しずつ、強くなっていく。
ただ、私はそんなのゆりがやっぱり嫌いだ。
その「少しずつ、少しずつ」強くなっていく過程で、
大きく傷ついた人がいて、大切なものが失われたのだ。
でも、浮気をされた「妻」は被害者だから、
それに対して罪悪感は持つ必要はない。
わかっているんだけれど、それでも、どうももやもやとする。
「妻」って、そんなに偉いものなのかね?


と、今さらまだ言っている私は、
本当は結婚に向いてないんだろうなあ。


風花

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