破線のマリス  野沢 尚

「破線」とは、テレビの画面を構成する525本の線のことで、
「マリス」とは、悪意を意味する。
ニュース映像の編集を仕事とする遠藤瑶子は、
客観性より自分の主観を優先、視聴者にインパクトを与える映像を作る。
それは、時には事件の解決に結びつくこともある。
が、故意に視聴者の思考を誘導することもある。


文章にしても映像にしても、
いくら客観的に伝えようとしても、そこにはどうしても作り手というか
送り手の感情や意思は反映されるものだし、
だからこそ面白さがあるのだと思うけれど、
正直、やっぱりテレビは怖いなと思った。
見ている側には、すべての情報が流れてくるわけではない。
選別された情報を、さらに作りこんだものが届くわけで、
それだけで批判したり判断したりするのは難しい。
できるだけ公正な判断をしようと、多方面から情報を得ようと思うと、
現代の社会では、それはそれはものすごい情報量になってしまうわけで。


この物語の中では、視聴率の取れる映像を作る瑶子の能力と技術が利用され、
それが瑶子とある官僚の運命を狂わせていく。
誰が操っているのか、目的は何なのか、伏線がてんこもりで
それはそれで面白かった。
後味はあまりよくはなかったけれど。


破線のマリス (講談社文庫)

破線のマリス (講談社文庫)