アカペラ  山本 文緒

15歳のたまこと72歳のじっちゃんの不思議な関係を描いた「アカペラ」。
従姉妹との恋愛を引き裂かれてダメ男になってしまった38歳の男の話「ソリチュード」。
50歳の未婚の姉と、39歳の体の弱い弟、そして弟を慕う19歳の女の子の「ネロリ」。
これらの3つのお話で構成された本。
家族や親戚の温もりや繋がりを描いたと言えなくもないけれど、
微妙に近親相姦的なにおいがして、
先日読んだ「私の男」を思い出してしまった。


「アカペラ」は、たまことたまこの担任が
それぞれの視点から交互に語っているのだが、
たまこの語り口調がどうも私には苦手で・・・・・・
うわー、ちょっと、これを読み進むのは無理かなあと思いつつ、
しだいに15歳のたまこの心の中が見えてくるにつれて、
違和感も消えていった。


「ソリチュード」。これが一番「私の男」を思い出したかな。
父親と娘、親戚のオジサンと娘。
私が女だからか、よくわからない。
私が娘の立場としても、大人の男に対して、
それも血の繋がりのある相手に対して
そういう思いをしたことはないし。
でも「私の男」も「アカペラ」も、女性作家が書いたんだよなあ。
むーん・・・・・・


そして「ネロリ」。
私はこの話が一番好きだったかも。
最後に綴られるココアちゃんの思いに、救われる気がした。
若さとか、未来とか、
そういう存在が、ただ無条件に心強いこともある。
そう思った。


アカペラ

アカペラ