楽園(上・下) 宮部 みゆき

模倣犯」で事件を追っていたライター前畑滋子の9年後の話。
9年前の事件の続編というわけではないけれど、
あの事件が、前畑さんにも周囲にも世間にも、
まだまだ影響を及ぼしている。
そんな中で、事件のルポライターの仕事から遠ざかっていた彼女が
息子を事故で無くした女性の依頼を受け、
16年前の事件を追うことになる。


子どもが、どんどんグレてしまう。
どうしようもなく、どんどんダメになってしまう。
コトバが届かなくなってしまう。
そんなとき、私だったらどうするだろう。


人はいつから、戻れないくらい邪悪になるんだろう。
育った環境とか、いろいろあるかもしれないけれど、
引き返すポイントはいくつかあったはずで、
それを全部逃してしまったときに、
本物の邪悪な人間になってしまうのかもしれない。
そうなってしまったら、もう戻れないのかな。
そう考えると、とても不安になる。


6年生にもなると、周囲にもだんだんと
「この子、このままいくとやばいんじゃないかな」という子が出てくる。
一番怖いのは、「模倣犯」の網川や、この物語のシゲみたいに
人を支配する喜びを知ってしまった子だ。
支配される側のつらさ、悔しさ、悲しさを知ること、
支配される側も感情を持つ人間なんだということを、
まだ理解できるうちに教えなくちゃいけない。


のだろうけれど。
それを見逃してしまうんだろうなあ。
もどかしいし、はがゆいけれど。
人間て、すごく繊細な生き物なんだなと思う。
だからこそ、可能性もあるし、
だからこそ、とことんダメにもなれるのかも。


最後は、思わず涙が出た。
辛くて悲しくて、そんなお話の中に、
ラストの暖かさが心にしみた。


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ライターとしての仕事の仕方も面白いと思った。
事件を追うライターの取材の仕方とか。
相手との駆け引きとか。
私がやっている仕事とは全然違う分野の取材なんだけど
参考になるな〜。
そして、余計なことを言ってしまったり、
相手を怒らせてしまったり、
そういうときにもぺしっとおでこを叩いて
前に進む前畑さんの姿に、ちょっと勇気をもらった。


楽園 上

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