私の男  桜庭 一樹

震災で家族をなくした少女が、親戚に引き取られ、養女となる。
父・淳悟と娘・花の、普通では考えられない関係が、
娘の結婚から時を遡って描かれる。


2人を取りまく周囲の人々は、
みんなやさしい。
2人がかつて暮らしていた北の町の人々も、
花が結婚する相手も。
そして、花を9歳まで育ててくれたお父さんも。


でも、そんな周囲の優しさをやんわりとこばんで、
結局は2人の世界だけで生きている。
2人の世界だけが大事で、それを守るためには、
周囲の優しささえも邪魔になる。


そういう愛のカタチに憧れる時期もあるのかもしれないけれど、
今の私にはとてもそうは思えない。
正直、嫌悪感も感じる。
それが、近親相姦であるからなおさらかもしれない。


でも、最後まで読んで、
2人がそうなったのも、なんとなく理解できる気がした。
心の中にぽっかりと空いた深い深い空洞を埋めるために、
それは必要なことだったのだと。


それでも、やっぱり私は2人の世界には入れないし、
きっと、ずっと、2人の周囲の人々の立場であるのだろうと思う。


なんて。つまんない大人になっちゃったってことなのかな。


私の男

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