ぐるりのこと  梨木香歩

西の魔女が死んだ」を映画館で見た後に、本屋さんで買った
梨木さんのエッセイ。
旅をしたときのこと、ニュースを見て感じたこと、
そうした身の回りの「ぐるりのこと」を、
静かに、深く考えている。


毎日、仕事と家事と育児をこなしながら、
少しでも自分の時間や睡眠時間を取りたいという思いから、
ついつい、焦ったりいらだったりしてしまう自分を感じる。
できるだけ早く、効率よく。
そして、いつのまにか、
私は自分の「ぐるりのこと」を見回す余裕をなくしてしまったように思う。


受験勉強対応型に見られる、傾向と対策で仕分けした、
マニュアル仕様の思考回路について、梨木さんはこう語っている。

人生の一時期ならいいかもしれないが、十数年続くと思うとたまらない。その一番の弊害は、立ち止まって深く長く考え続ける思考の習慣が、身に付きにくくなることだ。そのことについて深く考える。深く悲しみ、考える。何日も何週間も何ヶ月も、あるいは何年も。そういう思考の習慣。


「深く悲しみ、考える」
どきりとした。


悲しむことは、とても疲れることだ。
時間もかかる。
忙しい毎日の中、私は、深く悲しむことを避けてきたような気がする。
そのうち、深く悲しむことや深く考えることを避けることに慣れてしまい、
効率や機能性ばかりを求めた、
マニュアル仕様の思考回路になってしまうのかもしれない。


これはおかしいんじゃない?と思ったこと。
やりきれない寂しさや悲しさ。
大切なものを愛しいと思う気持ち。
自分の「ぐるりのこと」から逃げずに、
もっときちんと、丁寧に向き合いたい。

もっと深く、ひたひたと考えたい。生きていて出会う、様々なことを、一つ一つ丁寧に味わいたい。味わいながら、考えの蔓を伸ばしてゆきたい。


もっと深く、ひたひたと考えたい。
私の周りの「ぐるりのこと」を、一つ一つ丁寧に味わいたい。
それが私の、今年の目標。


ぐるりのこと (新潮文庫)

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