はたらくわたし  岸本葉子

フリーランスのエッセイストであるという著者。
何冊も本を出していて、テレビにも出ているらしいのだが、
実は今まで知らなかった。


著者が仕事をする日常を日記形式で綴ったこの本。
すごく引き込まれて、ぐいぐい読み進んでしまった。
エッセイストとライターは違うし、
私とは比べ物にならないくらい経験も実力も名もある人だけれど、
そんなすごい人でも、実際に書くときには
書けない・・・と悩んで何度も書き直しをしたり、
仕事で関わりあった人の態度にむっとしたり、
スケジュール的にきついかなと思いながらも、
お金のことを考えて仕事を受けてしまったり、
そんな自分に自己嫌悪してみたり。


ああ、わかるわかる。そうそう、そうだよね。うんうん。と、
読みながら共感できる部分がたくさんあって、すごく嬉しくなった。
締め切りが気になってついついいろんなことの日延べができないことや、
プレッシャーのかかる仕事がずっと気になって
準備のしすぎでかえって疲れてしまうところや、
人の評価を気にしまいとしながらも、つい気にしてしまい
気に病んでしまうところなど、
自分と似ているなあと思うところが多いからかも。


フリーで、そしてライターとして仕事をしていく上で
なるほどなあと思うことや、勉強になることもたくさんあった。
年齢や性別関係なく、プロとして真摯に、そして誠実に
仕事にも仕事相手にも取り組む人たちの姿が描かれていて、
こちらも身のひきしまる思いをしたり。
あと、ちょっとほっとしたのが
原稿の直しが来ると、億劫だなあと思う気持ちに
自分で罪悪感を持つこともあったけれど、
著者ほどの人でも、そして他のライターさんやデザイナーさんだって
そう思うことはあって、それもまた当たり前の感情だということが
わかったことかな。


一番心に残ったのは、さまざまな周囲の評価や意見に
だんだんと自分の方向性に迷いが出てきた著者が、
ある仕事を通して一つの結論にたどり着いたときの言葉。

 でも、それと、その声に自分を合わせるかどうかは別問題だ。すべての人の意に沿うことはできないし、意に沿うことを目指すのが、誠実さでもないはず。
 自分の今したいこと、しようと思うことを、ひとつひとつするしかない。この単純な事実にたどりつくまで、なんと時間がかかったのだろう。
(中略)
ある課題が示されたとき「そのことをすると、自分に何がもたらされるか」より前に「そのことに対して、自分は何ができるか」をまず考える。これを仕事の指針にしよう。


私も、仕事が自分にもたらしてくれることより、
自分がこの仕事に対して何ができるのかを、
一番に考えるようにしよう。うん。


はたらくわたし―エッセイストの仕事日記を公開! (sasaeru文庫 き 1-1)

はたらくわたし―エッセイストの仕事日記を公開! (sasaeru文庫 き 1-1)