辞めない理由 碧野 圭

主人公は女性誌の副編集長として活躍している和美。
小学一年生の娘を持つ母でもある。
仕事と子育ての両立で頑張っていたのだが、
ある日突然、理不尽な方法で降格、左遷される。
そして娘も学校でトラブルを起こす。
精神的に追い詰められた和美だが、
左遷された部署で新しい雑誌を作るために動き出す。


前半、和美が会社で追い詰められていく様子は、
読んでいてつらかった。
自分の知らないところであることないこと言われ、
結果的に辞めるようにしむけられるというのは、
私にも経験があるからだ。
私の場合は、まさに妊娠が原因だったけれど。


あの頃は本当につらかったけれど、
仕事も友人も含めて、今の私があるのはあの頃の経験があるからと
それを思えば、何事も無駄ではなかったのだなと思うし、
それは和美のその後の活躍を見ていても、それを感じた。
和美は会社を辞めなかったけれど、私は会社を辞めた。
辞めたことに後悔はしていないし、
あの時の仕事に戻りたいとは、今はもう思わないけれど、
それでも、今になって思えば、
辞めるにしても、他にも取る方法はいろいろあったのかもしれないと
思ったりもする。


後半、和美が新しい雑誌を立ち上げていく様子は、
「雑誌作り」のプロセスとその現場を知ることができて
面白かった。
あまりにとんとん拍子に進んでしまう展開には
うーん……な感じだったけれど。
でも、人脈やコネを頼らず、自分の真摯な気持ちで
なかなか取材を受けてくれない相手の心を開かせて
取材に結びつけたくだりは、いいなあと思った。


辞めない理由

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