きみの友だち  重松清

小学5年生のときに事故に遭い、松葉杖の生活になる恵美。
その8つ下の弟のブン。
この姉弟と、2人を取り巻く友だちを順に「きみ」と呼びかけ
主人公としながら物語は進んでいく。


勉強もスポーツもでき、生徒会の役員もこなし、
つねに同級生からの羨望のまなざしを受ける
ブンと、その親友のモト。
いるんだねえ、こういう出来杉くん。
でも、できるからこそ、心の中にある嫉妬の気持ちや劣等感、
焦りなどを簡単に表に出せない辛さもあるんだな。


そして恵美。
事故に遭ってから「みんな」を嫌うようになり、
だれでも「みんな」でいる間は付き合おうとしない。
事故後に友だちになった、体の弱い由香ちゃんとだけ
心を通わせる。


最初は、あまりにも上から目線というか。
たかだか中学生や大学生(ブンたちの話のときでは
大学生の恵美が描かれている)で
ここまで達観しすぎているのはどうよ、と思わなくもなかった。


でも、ここを読んではっとした。

どんなに悲しくても大切な思い出になる。三年間で心を鍛えた。死んでしまうかもしれない友達と付き合うというのは、そういうことだ。

まだ中学生で、友だちの存在がとても大切な時期に、
大切な人がいつか自分のそばから永遠にいなくなってしまうということを
常に言い聞かせながら生きていくというのは、
どんなに過酷なことだろう。
他の人の何年分もの悲しみや悔しさを感じ、
いろんなことを考えたのだろう。


そして、特に恵美や恵美の友だちについての話では
「みんな」に翻弄される女の子たちの姿が描かれている。
男子より女子の方にとっての方が、「みんな」の存在は
大きいのかもしれない。


でも、「みんな」の存在は、時には凶器にもなる。
そして、別に子どもだけの世界に存在するのではなく
大人の世界にだって「みんな」は存在する。
「みんな」はめんどくさくて、でも、恐ろしいから
あなどれない。
でも、「みんな」のことばかり考えて
自分が本当に大切にしているものを見失うことがもっと恐ろしい。


恵美ほど強くなるのは難しいかもしれないけれど、
「みんな」という呪縛からみんなが自由になれたら、
子ども時代はもっともっと、楽しくなるんだろうなと思う。
もちろん、大人も。


きみの友だち

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