セックスレスキュー  大橋希

著者は、4年ほど前に私の家族を取材してくれたときの編集ライターさん。
おおっ、本を出していたんだ!これは読まねば。


セックスレスに悩む女性のための相談所「せい」を主宰するキム氏、
そして彼が解決法の一つとして勧める性の「奉仕隊」と
それを利用する女性たち、奉仕隊の男性たちの声などを通し
性の問題について取材して書いた本だった。
「奉仕隊」とは、面接や適正試験を経てキム氏に認められた男性たちで
無料で女性にセックスを奉仕するボランティアだ。


ううーん、正直、とっても違和感。
セックスレスというのは、そこに至るまでの状況や精神的な背景があって
表面化された現象の一つであって、
体が乾いているからそれを癒せば問題解決というわけではないのでは?


大橋さんも、やはりとまどいや疑問を持ちながら、
キム氏をはじめさまざまな人たちにインタビューをしている。
出張ホストの対応に気まずい思いをしたり、60代の精力絶倫な奉仕隊の男性に
タジタジになる自分の姿も描かれていて、
なんだか一緒に取材をしたり考えたりしている感覚になれて面白かった。
他の人の感想に「上から目線」みたいなことが書いてあったけれど、
私はそうは思わなかった。
ただ、性を扱う取材は難しいだろうなとは思ったけれど。


やはり、一番興味を持ったのは、奉仕隊を利用する女性たちの話。
利用するまでに至った背景、利用して感じた満足感や後悔など、
いろいろと考えさせられる。
女性たちのほとんどが、「せい」を訪れる前に心療内科などを受診したことが
あるという話などからも、奉仕隊を利用するということは
相当思いつめた結果の選択なのだろうと思う。
そして、奉仕隊を利用するということで
救われる人がいるということも事実なんだなと。


ただ、キム氏が言うほど、それですぐに女性がラクになるほど
簡単な問題でもないと思う。
奉仕隊と言っても、所詮シロウトだなというタイプと
ボランティアでここまで女性のことを考えてあげられるのは
すごいと思えるタイプがいる。
相性もあるし、それぞれが抱えている状況も違う。
一歩間違えると、さらに傷が大きくなるような気もする。


体の渇きが心の乾きの原因になっているのであれば
有効な方法なのだろうけれど、心の渇きの方が大きな原因になっている方が
多いんじゃないかな。
だからこそ、奉仕隊も話をすることを大切にしているのだろうけれど、
心が癒されれば、そこに恋愛感情が生まれる可能性は避けられないだろうし
でも、その感情はルール違反とされる。
その辺りはお互いの自己責任らしい。


この本では、夫が妻を拒むセックスレスが取り上げられているが
妻が夫を拒む場合もあると思う。
でも、キム氏は
「男は風俗があるから大丈夫。でも、女にはそれがないから奉仕隊」
という考えが基本らしい。
(「せい」のサイトの掲示板にもそういうことが書いてあった)
もちろん、キム氏も心の問題も大切にしていないわけではない。
でも「さ、利用するの?しないの?しないアナタはここでは用はないのよ」
みたいな感覚には、うーん・・・・・・結局、やれば万事問題解決と思ってる?と
感じてしまう。


確かに、奉仕隊は一つの解決策ではあるのかもしれないけれど、
やはり私の中では違和感がぬぐえなかった。


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