風に舞い上がるビニールシート 森絵都

6編の短編集。
この著者の本は初めて読んだ。
一つひとつの作品は、それぞれ主人公たちの性別も仕事も
抱えている大切なものも違っている。


人が大切にしているものは、他の人にとっては
どうして?と思うことがある。
それでも、大切にせずにいられない。
それが、時には自分自身や周りの人を傷つけることになっても。


ただ、それでも、自分の信念に嘘をつかずに
大切なものを大切にする勇気は
最後には希望に繋がるんだな、なんて思った。


この6つの作品の中で、やはり一番心に残ったのは
表題作でもある「風に舞い上がるビニールシート」。
なのだけれど、一番心に残った言葉は、「犬の散歩」の中の

自分には関係ない、と目をそむければすむ誰かやなにかのために、
私はこれまで何をしたことがあるだろう?

先日読んだ「テロル」を思い出した。
捨てられた犬の保護のボランティアをする「犬の散歩」の恵利子も
「風に舞い上がる〜」で難民保護に人生をかけるエド
目をそむけられなかった人たちなのだ。
そして、「テロル」の妻シヘムも。
ただ、その方法が、力の使い方が、違ってしまったんだなあ。
だから、私たちはシヘムを単純に責められないのかもしれない。

なんて、読んだ後も何度も思い出させて
考えさせられる「テロル」は、やっぱりすごい本だなと
改めて思ったりして。


風に舞いあがるビニールシート

風に舞いあがるビニールシート