空中庭園

家族の間では秘密はなし。という決まりがある京橋家。
でも、実際、そんなことは不可能なわけで。


過去と、自分の母親への気持ちを隠して、平和な過程を築こうと
必死になっている絵里子。
もう一つの人生があったのではと思い、浮気を繰り返す夫。
自分が仕込まれた場所であるラブホテルに行く娘。
学校での自分の姿を絶対に見せない息子。
そして、子育てに後悔している絵里子の母親と、
夫の浮気相手であり、息子の家庭教師であるミーナ。
この6人のそれぞれの視点から、京橋家が描かれる。


隠すような恥ずかしいことなんて、この家には何もないと言い、
ベランダを花で飾り、明るく振舞う絵里子が、
とても悲しい。
それぞれが抱えている過去や現在の暗い思いが、
誰もが感じそうなことや、やってしまいそうなことであるがゆえに、
読んでいてつらい。


読んでいて、つらいなと思ったのは前にもあった。
対岸の彼女」を読む前の角田光代さんの作品は、
2冊ほど挫折したのだ。
対岸の彼女」は、初めておもしろいと思えて最後まで読めた。
この「空中庭園」は最後まで読んだけれど、
気持ち的にきつかった。


暗さがきつかっただけではなく(暗い作品が嫌いなわけじゃないから)、
たぶん、登場人物の言葉遣いが苦手なのかも。
今の学生や若い親はそういう話し方をするのかもしれないけれど。
文章で読むと、ざわざわするのだ。


こういう、人の心の闇や、普通の人の生活をリアルに描き出すのが
この人の才能であり、作品の魅力なんだろうなと思うけれど。
だから、結局は好き嫌いの問題なんだろうな。もごもご・・・


空中庭園

空中庭園