ここがホームシック・レストラン

ここのところ取材が多いおかげで、
忙しいわりには移動中の電車で本が読めるのは嬉しい。
さて、酒飲みマダム二人が強力推薦するこの本。
うーん、やられました。


普通(でもないかな?)の家族のそれぞれの人生を
それぞれの視点から淡々と描いたものなんだけど、
ある時は母親の気持ちになり、ある時は子どもの気持ちになり、
自分の人生のいろいろな場面と重なった。


たとえば、女手一つで子どもたちを育てる母親のイライラした姿は、
仕事が忙しくてイライラして家族にあたってしまう自分と重なる。
この本の中の母親ほどひどいことは言ったりやったりしてないけど、
このままじゃ、私も大切なものをなくしてしまう、と、
改めて反省したり。


その中でも、末娘のジェニーのことが書かれた
「ドクター・タルはおもちゃではない」が、私は一番好きだった。
母親を信頼できないで拒絶しながらも、心の底では母親を求めているジェニー。
そして、本当は子どもたちを愛しているのに、それが伝わらない母親。
この二人が、ジェニーが一番つらい時に支えあい、
そして、ジェニーもまた夫の連れ子の悪事を笑いとばして見守ることができるほど
心の余裕ができて。


家族って、こうなんだろうな。
時には傷つけあって、憎みあったりしながらも、
本当はホームシック・レストランで最後まで一緒に食事をしたいと
思っている。そう思うことすら照れくさいことだけれど。


ここがホームシック・レストラン (文春文庫)

ここがホームシック・レストラン (文春文庫)