夜のピクニック

本もTVドラマも映画も、学生モノにはあまり興味がない。
そこに描かれるような、いわゆる「青春」ぽいものをしてなかったからかなあ。
高校時代は、ひたすら剣道やって、3年になってからはひたすら受験勉強で。
甘酸っぱい出来事や気持ちもなかったわけではないけれど、
まるで不器用でかっこわるくて情けなくて。
そういうかっこわるい自分を「青春だったなあ」と懐かしく思い返せるほど
まだ今の私も大人になりきれていないのかもしれない。


それなのに、どうして高校生の学校行事を描いた
この作品を読もうと思ったのかというと
まあ、ただ単に何度も何度も新聞で紹介されていたので、
そんなにおもしろいのなら・・・と思ったくらいで。


この物語は、朝の8時から翌朝の8時まで、ひたすら歩き続けるという
歩行祭」を通して、高校生の彼らが考えたことや微妙な人間関係が描かれている。
私たちの高校にも、似たような行事があったなあ。
たしか「強歩大会」だったと思う。
でも、それは朝から夕方くらいまでだったし、普段の部活の方がよっぽどきつかったかな。


ひたすら、ただひたすら歩いて、だんだん心の余計な飾りが取れていって
夜遅くなるにつれて、本当の気持ちを出せるようになる過程はおもしろいと思った。
普段はなかなかそんな経験はできないし。


もしかしたら、私は剣道と勉強に没頭することで
普通の高校生活を送ることから逃げていたのかもしれないなと、
ふと思った。
早く長崎を出たくて、早く家を出たくて、早く親元から離れたくて。
融のように、先ばかり見ていたような気がする。


それでも、こうして思い返してみると、
剣道と勉強以外にも、たくさんの出来事や思い出が私にもあったのだと、
そして、自分が少し勇気を出せば手に入ったものがあったのかもしれないと。
少し後悔して、そして、少し安心した。


夜のピクニック

夜のピクニック