その名にちなんで

インドからアメリカにやってきたベンガル人の夫婦の間に生まれたゴーゴリ
この変わった名前がだんだん嫌いになり、後に改名する。
その名前を軸に、彼の両親や彼自身の人生が描かれている。


アメリカにやってきた両親のインド風の生活は、
パキスタンと似たところも多く、俺様の子ども時代もこんな感じだったんだろうなと
面白かった。
俺様の親戚も、アメリカに住んでいる人が何人かいるけれど、
ゴーゴリの両親ぽい感じだ。イスラムも熱心に信仰しているらしい。
異国に住むからこそ、祖国の文化や宗教をより大切にするのかもしれない。
俺様はすっかり日本の生活に慣れており、子どもたちも普通の日本人のような
生活をしているが、もしかして夫婦ともにパキスタン人だったら、
また生活はずいぶん違っていたんだろうな、と、今さらながら感じる。


名前については、ゴーゴリの葛藤がすごくわかる。
私も、自分の子どもの名前に関してはずいぶん悩んだ。
実はユウキには、パキスタンの名前でミドルネームのようなものがついている。
これに関しては親戚からもいろいろとクレームがついたし、
私自身も、これで本当によいのかと、名前を付けた後でもずっと悩んでいだ。
それで、サナは日本でもパキスタンでも通用する名前にした。
まあ、最近は純和風の日本人でも面白い名前が多いからね。


ラヒリの作品を読んだのは、「停電の夜に」に次いでこれで2作目だが
ある出来事で気持ちが切り替わる瞬間というのが、
とても鮮やかに描かれているなあといつも思う。
例えば、名前の由来を父から聞いたとき、
それまで大好きだったアメリカ人の彼女との生活が、
父の死によって見方が変わってしまう様子。
その変化が、予測できる時もあれば、予測できずに急にくる時もあって、
どきどきさせる。


そして、ベンガル系の女性モウシュミ。
なんだか、わかるなあ。本人には自覚がなくても、
心のどこかに「この結婚は逃げなのでは?」という思いがあったんだろうな。
その思いは、気がつかないうちにどんどん気持ちを蝕んでいくのだ。
昔の日本人や、ベンガル人はそれでも自分の気持ちを押し殺していけたのかも
しれないけれど、アメリカ人として育ったモウシュミには無理だったんだろうな。
やっぱり、逃げの気持ちがある結婚は、難しい。
なーんてことを、わが身を振り返りつつ、改めて思ったりして。(あ、昔の話ね)


その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)

その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)