久しぶりに見た映画がこれって…と、自分でも思う。


賛否両論が激しくて、以前から興味はあったけれど、
なんとなく重たそうだなあと思って、なかなか手が出なかったのだ。
実際、重かった。眠気もふっとんだ。息が苦しくなった。見るのがつらかった。
風刺が効いていて「笑って泣ける」と言うけれど、笑えなかったし、泣けなかった。
ひたすら、苦しかった。


911のテロに関しては、いろいろな説があって、
いろいろな人がいろいろなことを言っていて、正直、どれを信じていいかわからない。
この映画も、監督ムーアの個人的な思想に洗脳しようとしていると
思えなくもない。


でも。戦争は真実だ。
テレビや新聞では公開されない映像に、ああ、私は何も知らなかったと思い知らされた。
のれるCDをかけて銃を撃つと興奮するという、若い米軍兵士。
人を殺すたびに、自分が死んでいくような気がする、
魂を殺さなければ人は殺せない、という同じく米軍兵士。


深夜にいきなり米兵が家に入ってきて、目の前で学生の息子を連れて行かれるイラク人の母。
戦争を怖がっていた息子が、イラクで戦死したアメリカ人の母。
もし、自分の子どもが戦争に連れて行かれたら?
もし、いきなり自分の子どもが目の前で敵の兵士に連れて行かれたら?
考えただけで、胃が締め付けられる。
考えたくないけれど、忘れてはいけないこと。


そうなのだ。戦争は、戦争を決める人がするものじゃないんだ。
そして、人間は誰もがみんな、親がいて、親戚がいて、友達がいる。


この映画で、私が一番あっぱれと思ったのは、
連邦議員へのムーアのインタビューだ。
「あなたの息子さんを、ぜひイラクへ」と、海兵隊のパンフを手渡す。
535人の連邦議員のうち、実際に自分の子どもをイラクに送ったのは1人だったらしい。


私もずっと思っていたのだ。
戦争を決める偉い人たちに対して。
まず、自分が行けばいい。それか、自分の子どもを行かせればいい。
ついでに、戦争で会社の利益が上がるとしゃーしゃーというお金持ちたち。
人を殺して泣かせて得たお金を手に入れて、幸せなんだろうか。
でも、そういう人は、その現実を知らないんだろうな。


息子を戦争で失った母が、ホワイトハウスの前で
「人がこんなに無知だなんて。知ってるつもりで何も知らない」
という言葉が、とても響いた。
そうだ。まずは、知ることから。何よりも、まず。