IN  桐野 夏生

女流作家タマキが、
緑川という作家が書いた『無垢人』という小説で描いた
愛人「○子」をモチーフに、
「恋愛の抹殺」というテーマの小説を書こうと
「○子」を探しながら、取材を重ねていく。
そこに、担当編集者との不倫という過去に体験した
自らの恋愛もリンクしていく。
さて、「○子」は誰なのか。
そして、自らの恋愛にどのような決着をつけていくのか。


というようなストーリーなのだけれど、
私が最も印象的だったのは、タマキと恋愛関係にあった
編集者「青司」。


この青司がタマキと出会ったときの様子がまあ、
私が最近一緒に仕事をして大嫌いだったとあるデザイナーと
そっくりで!
そして、その言葉や態度に傷ついたタマキの
悲しみ、怒り、無力感、などなど、
私がその時に感じたことと同じで。


そのデザイナーの暴言やら人を人とも思わないような偉そうな態度やらに
人間的にもビジネス的にも、これほどサイテーな奴がこの世に存在したのかと
それはそれは驚いたものだけれど、
こうして、小説に描かれるということは、そういう奴がほかにもいたのだと。


ただ、タマキはその後、その編集者と恋愛関係になるのだけれど、
こっちは、それだけはありえない。


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