横道世之介  吉田 修一

ちょうど毎日新聞を購読していたときに
たくさん広告が出ていて大絶賛されていたので、読んでみた。
毎日新聞で連載されていたらしい)


高校卒業後、大学進学で東京に出てきた18歳の世之介。
設定が80年代ということで、
携帯電話がなくて公衆電話を使っていたり、
ビリヤードが流行っていたりと
ちょうど自分の大学時代と背景が重なって、
懐かしい気持ちになった。


あと、世之介の出身が長崎ということで、
帰省したときの様子も、ああ、わかるなあと。
ただ、どうせなら長崎での場面は長崎弁にしてほしかったかな。


世之介は、特にどこか秀でたところがあるわけでもなく、
どこにでもいそうな普通の大学生。
女の子に興味があって、ちょっとめんどくさがりで、
クーラー目当てで友だちの家に入り浸っていたり、
流れでサンバサークルに入ってしまったり、
深く考えることもなく運転免許を取ることにしてしまったり。


そんな世之介なのだけれど、
彼の周りは、いつも温かな人の気持ちで静かに満たされていて。
どんな人にも、どんな出来事に対しても、
戸惑うことはあっても
決して否定したり拒絶したりしない
世之介だからこそ
彼という存在が、何年経っても人々の心に残るんだろうなあと。


ところで、著者の作品では「悪人」がとっても印象的なのだけれど、
この「横道世之介」は、普通の大学生の普通の生活が淡々と描かれている。
正直、登場人物の個性というか魅力では、
直前に読んだ「神去なあなあ日常」の神去村の人々に比べると
今ひとつ…という感じだった。


が、後半になって「えっ?」という展開が待っており、
ええ、そんな〜と思いつつ、ああ、またやられたなという。
たしか「パレード」も最初は淡々と若者の日常が語られてて
だからどーした的な印象だったのが、
最後に「ええっ」な展開になってびっくりしたのだった。


横道世之介

横道世之介