西の魔女が死んだ

原作がとても好きだなと感じた作品が映画化された場合、
見ないことが多い。
本を読んで、それぞれの読み手の心の中で育まれた世界観は
おそらく百人いれば百通りあるのだろう。
わかってはいても、他者が作り上げてイメージした映像に
どうしても違和感を覚えてしまい、
たいていはがっかりしてしまう。
そうでなくても、やはり1冊の本を2時間に納めるのは難しいと思うし。
私だったら、このシーンは入れたかったとか、
いろいろと考えてしまうのだなあ。


そんなわけで、「西の魔女が死んだ」は
とても好きな本の一つだったので、映画化されても見に行くつもりはなかったのだ。
が、「ダ・ヴィンチ」が原作者の梨木香歩さんの特集で
「おばあちゃん」を演じた女優、サチ・パーカーさんのインタビューを
読んでいるうちに、なんだか無性に見たくなってしまった。


実際見てみると、原作を読んでかなり時間が経っていたからかな。
原作のイメージだけを抱きながら、
抵抗なく映画の世界に入ることができた。


というか、映画の世界に魅了された。
風や雨の音、草や花の色、森を覆い尽くす霧。
そして、魔女の家。
これらが映像として再現されていて、
そして、それを映画館の大きな画面で見て、聞くことができて、
本当によかった。


映画を見ていて感じたのは、
うーん、なんというのかなあ。
大切なものを大切にしながら、きちんと、生きて行こうと。
無理をすることなく。
でも、現実の自分は、何か大切なものを見失っているような気がして。
映画を見ながら、それをつかみかけたような、
そして、もう少しで手が届きそうだったんだけれど、
結局届かなかったような。そんな余韻。
でも、がっかりという気持ちではない。
見つけたいと思う自分の気持ちが、嬉しいような余韻。


それはたぶん、自分で見つけるものだから、なんだろうな。
本や映画に教えてもらうのではなく。
自分で答えを見つけるのが、魔女の修行だから。