優しい音楽

「優しい音楽」「タイムラグ」「ガラクタの効果」の3編が収録されている。
3作とも、「え、それってどうなのよ」と戸惑ってしまうような状況で
展開される物語だ。


例えば、「優しい音楽」は、とてもモテルようなタイプではないタケルが
ある日いきなりかわいい女の子に声をかけられ、付き合うようになるが、
なかなか家族に合わせてもらえない。
その理由が、タケルにとっても、家族にとっても、とても悲しくて。


「タイムラグ」は、不倫相手が奥さんと旅行に行く間に子どもを預かってくれと言われ、
無理やり8歳の女の子を預かることになる話。


「ガラクタの効果」は、いろいろ拾ってくるのが好きな女の子が
とんでもないものを拾ってくる話。
いやー、同居人があんなもの拾ってきたら、私ならほんとに許せないね。


この3つの話を読みながら思ったのは、
人の弱い気持ちやずるい気持ちを、
否定するのではなくて、それをそのまま受け止めるというのは、
白黒はっきりつけて拒否することよりも、
実はとても大変なことなのかもしれない、ということ。


でも、その弱さやずるさを丸ごと受け止めた時、というか
受け入れた時、もっと大きなものが生まれるのかもしれないな、と思った。
拒否したら、それはそこで終わってしまうものだけれど。


なんて、そんなことは後で考えたことで、
「優しい音楽」と「タイムラグ」に関しては、電車の中で読みながら
涙がこぼれそうになるのをこらえるのが大変だった。
物語の世界にただ浸るだけでも心地いい作品だったと思う。


優しい音楽

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