猫鳴り  沼田 まほかる

「モン」と名づけられた猫をめぐる物語。
このモンは、どこか不思議な猫で。
捨てられても捨てられても戻ってきたり、
ふてぶてしい態度ながら、どこか憎めなかったり。
常にマイペースで人間とは距離を置いているようで
実は人間のことをよく見ているし、わかっている。
ああ、猫って、こんなだったよなあと、
猫好きにはしみじみしてしまう。


とまあ、猫について描きながらも、
その周囲の人間の心の内側のどろどろもしっかり書いているのは
いつもの通り。


最後、年老いたモンと飼い主の藤治の暮らしは、
死に向かっている姿がつらくて、
でも、なんとなく、すごくうらやましいような気持ちになった。
「自然に」老いと死を受け入れて
淡々と時間をかけて死んでいくモンのそばで、
藤治は葛藤しながらも、そんなモンの姿を受け入れ、
同時にいずれは訪れる自分の死を受け入れて行く。
そして、私も死ぬのもそんなに悪くないんじゃないかと、
自分も、こういう風に死んで行けたらいいなあと
そんな風に思えた。


そういえば、前の「アミダサマ」も猫の死が描かれていた。
でも、今回のお話はまたそれとは全然違う印象だった。

猫鳴り

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